仕事が進まない人のブログ

「かつて仕事が進まなかった人のブログ」になることを目指します

なぜ仕事にとりかかれないのか

やる気が出ない、だから仕事にとりかかれない。

 

仕事にとりかかれない理由をやる気に求めるとハマってしまいます。

自然にやる気が出てくるということはまずありません。普通は、仕事をしているうちにやる気が出てくるからです。

身体的疲労がたまっていてやる気が出ないのであれば、状況的に可能なら休息したほうがよいでしょうし、そうでなくても体操する、目薬をさす、何か食べる、といった改善策もあります。

やる気が出ない原因が自分以外にある場合、例えば環境が悪いなら環境を整えるとかやりようはありますが、他人が関わる場合はなかなか難しいです。

しかし、ただなんとなく精神的な問題でやる気が出ないと言い出すと、さらに深刻になります。

いわゆる「やる気が出ない」という言い方をするときは、やることによる利益と不利益が拮抗しているジレンマの状態で、次にとる行動を決定できないような状態にあります。

またしても、1ヶ月後締切の修士論文の例を出して考えてみます。なお、修士の研究内容が面白いとかつまらないとかでやる気が出るかどうかの話は抜きにします。

やることによる利益:

  • 大学院を修了し、就職できる可能性が高くなる
  • 将来の生活が楽になる可能性が高くなる
  • 将来、自分のやりたいことをやれる可能性が高くなる
  • 精神的安定が得られる
  • やったことを関係者や他人に賞賛される可能性がある
  • やらなかったことを関係者や他人に批判されなくなる

やることによる不利益:

  • 精神的・身体的労力がかかる(どのくらい?
  • 、他にやりたいことはできない
  • 困難に取り組む必要がある
  • やった結果、どうなるのか予測ができず不安である(例えば、指導教員に叱られるかもしれないし、何度も何度も訂正を命じられて徹夜をすることになるかもしれない)

やらないことによる利益:

  • 、(他にやりたいことがあれば)やりたいことができる
  • 、精神的・身体的に楽である
  • やらないことによる結果の予測が容易であり、その分の不安はなくなる

やらないことによる不利益:

  • やらなかった分を後で取り返す場合、時間的にさらに大変になる
  • やらないことを関係者や他人に批判される可能性がある
  • 大学院を修了し、就職できる可能性が低くなる
  • 将来の生活が厳しくなる可能性が高くなる
  • 将来、自分のやりたいことをやれる可能性が低くなる
  • 後で、やらなかったことを後悔する

これらの項目は、人によっては当てはまらないものもありますし、他にもあるかもしれません。とりあえず適当に思い付くものを挙げてみました。

実際のところ、やることによる利益とやらないことによる不利益、それから、やることによる不利益とやらないことによる利益は、ほとんど表裏一体です。しかし、そうでもないものもありますので書いてみました。

 

さて、これらを見て、今まで無意識に考えていた「やらないことによる不利益」が実は大きいものであることに気付いてやる気を出し始めるでしょうか?

やる気が出ないと言っているのが子どもであれば、経験が少ないので親や先生が指導することもできるでしょう。しかし、成人になるとそうもいきません。たぶん、これらのことはそれほど無意識ではなく、やる気が出ないときには常に頭に巡っていることでしょう。

そしてその結果、やることによる利益より、やらないことによる利益が頭の中でわずかに上回ったことになってしまうのです。

 

まず問題なのは、利益や不利益の見積もりが非常に難しいことです。

いくつかの項目には「可能性が高くなる」とか、「どのくらい?」という表記がありますが、要するに、程度によって判断が変わってくるのです。

必修の試験時間の真っ最中のように、今やらなければ確実に留年になるという状況で、試験問題に全然太刀打ちできないという悲惨な状態でなければ、まず解答用紙に答えを書くでしょう。

しかし、修士論文の締切は1ヶ月後ですから、今やらなくても後で書けばなんとかなるかもしれません。もちろん無事に修了できる可能性はその分下がりますし、後で大変になることも目に見えてはいます。しかし、それがどの程度なのか見積もることは難しいです。

難しいので、人は他の人の経験談を参考にします。しかし、それで心動かされるかといえば、そうでもありません。結局自分の経験や、基本的なスタンス(悲観的か、楽観的か)といったことの影響のほうが大きくなります。なんといっても、他人の経験はその人の場合の話であり、自分にそのまま当てはまるわけではありません。あくまでも、参考にしかならないのです。

 

次に、「」なのか「将来」なのかという要素も重要です。今の利益というのはほぼ確実なのに対して、将来の利益は保証されておらず、確率的に割り引かれてしまいます。極端な話、明日突然災害に遭ったりするかもしれません。そして、それは定量的には計算できません。

あるキャンペーンに今日申し込むと1万円もらえるが、なぜか、1年後に申し込むと10万円もらえると予告されている。さて、どうするか。

1年後に事故に遭って生きていないということは、まあないだろうし、1年後にハイパーインフレが起こって円の価値が暴落するということもまあないだろう。しかし、この企業がその1年後の予告を守るかどうかはわからない。それでも、10万円なら待ってもいいか・・・。もしこれが、1年後に10001円なら待たないだろう。じゃあ、いくらまでなら待てるのか・・・?

結局、企業の信頼性とか、この情報がどれだけの人数に知らされているのかとか、さまざまなパラメータが絡んでくるために判断は困難です。利益が金銭という数値で表されていてもこれですから、将来の生活の安定などといった曖昧な利益ではなお難しいことになります。

さらに、状況がまったく同じであっても、将来の利益に対する割引率が人によって異なります。がまんしても予想したより低い利益しか得られなかった経験が積み重なると、当然、割引率は高くなっていきます。ADHDなどの精神的障害の影響も無視できません。「これを頑張ったから嬉しいことがあった」「これをやらなかったから後で困った」という経験の学習に問題があって身についていなければ、それだけ不利になります。

 

最後に、その人のそのときの判断力が影響してきます。同じ条件でもそれぞれの人は総合的に異なる判断を下し、唯一の正解というものはなく、ただ傾向があるだけです。うつ病のような状態であれば判断力が低下している上にそもそも意思決定が行動に結びつきにくくなります。

 

現状、この分析的なアプローチは情報が不完全であるがゆえに効果はかなり限定的です。こういったことをほとんど考えたことがない方であれば、一度整理してみるといいと思います。しかし、「やる気が出ない」と悩んでいるような人は、たぶん、こういうことはすでにある程度わかっているのではないかと思います。

 

そこで、人は「やる気が出ない」ことについて考えるのをいったん止め、とりあえず何か仕事にとりかかろうとするのです。

さて、ここで堂々巡りになってしまいました。次は何について考えましょうか・・・